2024.04.26
COLUMN
コラム
ウチタニコラム vol.3
僕たちは今、『PUBLICカウンター』のリニューアルオープンの準備をしています。
PUBLICカウンターは、2020年にスタートしたレンタルスペースです。僕が共同代表を務める「株式会社カタマラン」というまちづくり会社が石山公園の運営事業者になったことをきっかけに、「公園と地域を結ぶ拠点」として公園そばの空き家活用を始め、これまで約80組の方に飲食や物販など多様な用途で使っていただきました。
今回のリニューアルでは、調理・製造と販売エリアが一緒だったところを、用途別に使えるモデルチェンジになります。
ここにカウンターを作ったそもそものきっかけは、「カウンターへの出店をきっかけに、公園とこのエリア全体の空気感を楽しんでほしい」という公園事業者としての気持ちからですが、実はもうひとつ、事業用仲介の不動産屋さんとして「お店がリアル店舗の開店後にうまくいかずに撤退するリスクを減らしたい」という思いがありました。
お店をオープンする前に、「致命傷にならない小さな失敗」を自分の名前で積んでみる
不動産仲介業をやっていて一番「きまずい」のは、仲介したお店が早々に撤退すると知ったとき。なんとも言えない、切ない気持ちになります。
お店を持つということは、とても大きな投資です。どのお店も内装・設備・メニュー開発などたくさんの準備と投資をして臨みます。しかしいざお店をはじめると、オペレーションや料理にまだまだブラッシュアップが必要であったり、店舗を構える前に対応が必要なものに気がついたりもします。
これがオープン前のタイミングであれば、「成長の糧」となる小さな失敗。一度立ち止まり改善に専念したり、イベント出店でもう一回試してみたりとトライアンドエラーを繰り返すことができます。
しかしオープン後となると話は別です。お店を作るために銀行から借りたり、賃貸なら家賃の支払いもある。オープンしてしまうと常にお店が続くか閉店するかの瀬戸際の話になり、最悪の場合、投資を回収できないまま閉店する「致命傷」になりかねません。
そんな大きな投資の前にまず「まちに飛び込んで」みること。最初から全国に通用するようなクオリティじゃなくても、「それでもやりたい」と思ったとき、まちという市場に自分の価値を問いかけることが必要です。
自分の表現がどう受け止められるのか、お客さまのリアクションを確かめる。改良して、また確かめる。そうやって表現のクオリティを高めながら小さな失敗と改善を積み重ねることが、いつか自分のお店をオープンするときの撤退リスクを下げる大きなポイントだと思っています。
ちなみに、活動する時にオススメなのは、必ず自分の名前(屋号)・ブランドで、リアルな知人「100人」に声をかけて活動すること。名前と責任の元で全てを回す緊張感を味わってみると、見えてくるものが挑戦する以前と全く変わります。
自分軸の活動を可能にする、オープン前のファン作り
自らの店舗をオープンする前にまちへ飛び込むメリットは、もうひとつあります。それは、オープン前にファンを獲得できることです。
イチからお客さまを呼び込もうとすると、たくさんのお店の中から選んでもらう必要があるため、どうしてもお客さまや既存の市場に合わせた運営の形になりがちです。
例えば、価格と営業時間。本来は、手間ひまに見合った適切な価格をつけるべきところ、市場の反応の予想がつかず、一般的な値段設定にしてしまう。すると採算が取れず予定外の営業時間や回転数になり、いつの間にか疲弊してしまう。
このパターンは本当によく耳に入ってきます。好きで始めたことなのに、他人や市場に合わせていつの間にか仕事に振り回されていく。これはあまりにしんどい。
その点、事前に、提供するサービスの価値を理解してくれるファンがついていると自分のスタイルと商品に自信を持って、「自分軸」の活動を選ぶことができます。カウンター卒業生でもある「森のみちくさ」は、そのとても良い例。
営業時間や販売スタイルなど、独自のスタイルを編み出されていますが、どれも自分がやりたいことやお店をつくる意味を見失わず、自分にとってベストなリズムを探した結果、行き着いた形なのだろうと思います。(森さんインタビュー記事はこちら)
リアル店舗の開店投資という大きな挑戦をする前に、まちの中で良いステップを踏むこと。オープン前にファンを獲得して疲弊しない「自分軸」の活動のベースを作ること。
まちに飛び込むことは一見遠回りに見えても、実はリスクを下げてくれて、結果、息の長い活動につながります。
みんなが自分のやりたいことにチャレンジできるまちへ。
良いチャレンジは、まちに根付き、まちを楽しくしてくれる。
オープンから3年たった今、カウンターは出店者に限らず、エリアそのものがより魅力的になるきっかけとしても機能し始めています。良い活動を積むことができたエリアには、やはり良い記憶が残るためでしょうか。
同じエリアで、自らのお店を開店するひとが比較的多く、近隣の石関町・出石町エリアではカウンター卒業生によるリアル店舗がこの3年間で3店舗も増えました。こうして魅力的な店舗が地域に増えるのは、住民としても嬉しい限りです。
不動産仲介業者としての「きまずさ」からリアル店舗の開店前のお店が育つ場を作りましたが、この3年間の変化を振り返ると、まちに新しいチャレンジを受け入れる場所があることは、そのエリアの豊かさや魅力を高めることにつながっていると改めて実感します。
まちの中で、みんながやりたいことにチャレンジできて、いきいき暮らしている。これからもパブリックカウンターは、そんな後押しができる「実験場」でありたいと思っています。
お店をやりたいと思ったら、銀行に融資の相談に行く前にまず、PUBLICカウンターで経験の積み上げとファン作りをぜひ。チャレンジしたいことがある皆さん、気軽にこの実験場からまちに飛び込んでください!
PUBLICカウンター
住所 岡山市北区石関町5-11
営業時間 7:00 – 21:00
▶利用方法など最新情報を随時こちらのアカウントから発信しています。
HITPLUSwebの「まちカレンダー」でも出店スケジュールを更新しています。
お近くの方はぜひチェックして、日替わりの店舗の登場を楽しんでください!
「PUBLICカウンターリニューアルオープンイベント」春の内覧会開催
4月28日(日)10時~15時
内覧会 詳細はこちら
この日は新たに誕生した菓子製造スペースをご覧いただけます。
当日は施設を運営する(株)HITPLUSのスタッフが常駐しておりますので、内覧をご希望の方はお好きな時間にふらりとお立ち寄りください!
⚫︎販売スペースでは10時~「みちくさスコーン」さんのスコーン販売も行われます。タイミングが合えばパブリックカウンターでの活動スタートから少しずつ活躍の場を広げ、リアル店舗を開店したみちくさスコーンの森さんのお話も少し聞けるかも?しれません!
⚫︎基本的に内覧は予約不要で対応させて頂きますが、事前にご予約を頂いた方には美味しいスコーンの差し入れも用意しております(1組様1つ限り)
まちに飛び込む一歩目の踏み出しかたから店舗の相談まで、気さくに情報交換と質問ができる場にしたいと考えています。春のお散歩がてら、ぜひお気軽にお立ち寄りください!