2023.08.31
COLUMN
コラム
自然派ワイン専門店「プレヴナン」が
プレヴナン山本和志さん
無農薬・有機栽培のぶどうを使用したワインを取り扱う自然派ワイン専門店「プレヴナン」。まだナチュラルワインが珍しかった2008年ころ、岡山市北区の本町にお店を構え、からだに優しいワインを楽しむ文化を岡山に根付かせたお店です。
そんなプレヴナンが2022年1月、13年間お店を営んできた本町を離れ、緑と川が見える旭川沿いの出石町へと移転しました。店内には150種類以上のワインを管理するワインセラーを備え、自然を眺めながらアペロが楽しめる、のんびりとした空間が広がります。
プレヴナンが出石町へと店舗を移した背景には、自分たちのやりたいことをシンプルにするための“軽やかさ”がありました。
今回の場所
築年月日:昭和49年9月/構造:RC造/延床面積:49.82㎡
登場人物プロフィール 山本和志(やまもとかずし)さん
株式会社プレヴナン代表。1969年、岡山県岡山市生まれ。日本ソムリエ協会認定ソムリエ、フランス食品振興会認定コンセイエなどの資格を持つ。2008年から自然派ワイン専門店「プレヴナン」を経営。岡山市内で開催されるイベントやマルシェの運営にも携わる。
岡山のワイン好きがこぞって足を運ぶ「プレヴナン」は、岡山でナチュラルワインを語るうえでは欠かせないお店のひとつ。山本さんがナチュラルワインを取り扱うようになったのは、2005年に参加したワインセミナーがきっかけでした。
山本さん「そこにはナチュラルワインがずらりと並んでいました。当時、ナチュラルワインは高価なものばかりだと思っていたのですが価格も手頃でした。しかも試飲してみるとびっくりするほどおいしい。クリアな余韻が続くことに衝撃を受けました」
山本さんはお客さんが手に取りやすい価格帯でありながら、雑味の少ないナチュラルなワインにいち早く注目し、2008年に岡山で自然派ワイン専門店をオープンしました。
コロナ禍で愛着のあった本町を離れることに
山本さんはプレヴナンに続き、ナチュラルワインが楽しめるレストラン「ナチュレルモン」を2014年にオープン。健康に関心のあるひとをターゲットに、順調にファンを増やしていきましたが、2020年のコロナ禍で大打撃を受けます。
山本さん「からだに気を遣うひとの中には医療従事者も多く含まれ、わたしたちのターゲットとするお客さんは最も行動制限を受ける業種でした。待てど暮らせどお客さんが来ない状態が続き、これまでと同じ形態で飲食店を経営し続けることは難しいと悩むようになりました」
このような状況を打破するため、山本さんは長年お店を営んできた本町から離れることを考え始めます。
山本さん「もうひとつの決め手は“まちの変化”でした。本町でお店を続けているうちに長年店を営んでいた西川緑道沿いの雰囲気が変わっていき、より“自然派”にあうエリアを望むようになりました」
旧プレヴナンの場所は駅から徒歩7分ほどの飲食店が立ち並ぶエリア。店舗の入れ替わりが激しく、移転してくる店によってまちの雰囲気も大きく変わるといいます。
山本さん「まちの雰囲気を自分の手で変えることは難しいですが、自分たちの店を移すことはできますから」
まちの変化も相まって、コロナ禍で移転の決意を固めた山本さん。時代やまちが変化するのと同じように、自分たちもニーズにあわせて居場所を移せばいい。そんなメッセージをわたしたちに教えてくれました。
岡山の観光地にナチュラルワインを。念願の出石町へ
プレヴナンの移転先としてまず候補にあがったのが出石町エリアでした。
山本さん「出石町は近くに後楽園や岡山城があるものの、お土産を買う場所や滞在施設が少ないと感じていました。いつかは出石町にお店を持ちたいと考えていました。
緑と川が見える場所を条件に探していましたが、このエリアは非常に人気が高く、案内された物件はどれも条件があわなかったんです」
そこで山本さんは、以前から知り合いだったHITPLUSへ移転の相談をします。
現在の物件と巡り合うまでは1年ほどかかります。諦めかけていたとき、HITPLUSの旧事務所が空くことになり、その場所が山本さんの理想に近いとのことでHITPLUSが紹介。移転の準備を進めることに。
山本さん「物件とのつなぎはもちろん、本町の、旧プレブナンの退去場所の引き継ぎもHITPLUSに担当していただきました。わたしたちの後に入るテナントをスムーズに見つけてくれて、原状回復費やその期間に発生する家賃を節約することができました」
こうして2022年1月、山本さんはかねてから希望していた出石町に店舗を構えることになります。
“コンパクト”なつくりで、まちにフィットする新店舗
以前は30坪だった店内が20坪になり、コンパクトな店舗へと生まれ変わったプレヴナン。これまで別々の場所にあったワインショップ、レストラン、キッシュの製造スペースを1つの場所にまとめました。
山本さん「家賃はこれまでの半分になり、コンパクトになったことで効率的にお店をまわせるようになりました。コロナ禍でメニュー開発が進んだキッシュは、ぜひ食べていただきたい自慢の味です」
たっぷりと光が差し込むイートインスペースでは青空と緑のコントラストが美しい旭川の景色を眺めながら10種類程の自然派ワインと、オリジナルの惣菜「メメシルヴィのミニキッシュ」を楽しむことができます。
以前の店舗と比べて広くなった場所もあるのだそう。
山本さん「オンライン販売に力を入れようと、現在の店舗のワインセラーは以前の3倍の収納スペースを確保しました。ナチュラルワインは温度に敏感なため、全ての商品をワインセラーで管理しています」
さらに、出石町にお店を移したことで嬉しい誤算もありました。
山本さん「駅から遠くなり、利便性が下がったので来店するお客さんが減ると予想していましたが、増えたのは予想外でした。特に浜エリアのお客さんが散歩がてら覗てくれて、今では常連さんがよく昼飲みをしにきてくれます。出石町エリアのアットホームな雰囲気で、何かをしようとするときも親身に応援してくれるのでとてもありがたいです」
これまで知らなかったお客さんに認知され、来店客は増加。お客さんの生活圏が近い場所にお店を構えたことで、山本さんとお客さんの距離も自然と近づいていったといいます。
岡山に1870年代パリのような場所を。
念願だった出石町への移転を叶えた山本さんのなかには、自分のやりたいビジョンを実現させたいという強い思いがありました。
山本さん「わたしには、<1870年代のパリのような食のテーマパークを創る>という夢があります。
印象派の画家が活躍し、人々が新しいものを生み出そうとするエネルギーに満ちたこのころのパリには、無添加・無農薬の食べ物しかありませんでした。わたしは、この時代のフランスが最も<食がエネルギーをもった時代>だったと考えています。
そんな当たり前を岡山につくろうと、今は構想を練っている最中です」
山本さんは無農薬・無添加がスタンダードな<食のテーマパーク>をつくるべく、現在さまざまな活動に取り組んでいます。2023年9月3日(土)に旭川の土手で開催される「出石ENNGAWAマルシェ」もその中のひとつです。
山本さん「今回のテーマは、ナチュラルマルシェ。無農薬・無添加のおいしいものを集めました。ワイン業界では浸透しつつあるものの、「食」という大きなカテゴリーでみると無農薬・無添加はまだまだだと思います。このマルシェをきっかけに、素材本来の“自然のおいしさ”を味わってもらえたらうれしいです」
次々と新しいことを実現させていく山本さん。自分たちにフィットするエリアを選ぶという選択が、新しい出会いや共感を呼び、自分たちの夢を加速させる一歩となっているようです。
最適な状態でのバトンパスが叶うと、店主はより軽やかに新しいことに挑戦できます。長年愛された人気店が理想を追求して新天地へと移る。その空き物件に定着しやすい新しいテナントが入る。このように、飲食店が元気な状態で営業できる好循環を生むことが、生き生きとしたまちをつくることにもつながっていくのではないでしょうか。
HITPLUS担当者のコメント
不動産の「最適なバトンパス」で好循環をうむ
今回、山本さんの退去物件の引き継ぎもHITPLUSが担当しました。
不動産取引は、できるだけ高く貸したい大家さんと、経費を抑えたい店子がやりとりするもの。そこは、間に入る不動産会社が勘所を抑えた「適切なバトンパス」によって、三方良しの契約を叶えることができます。
今回は山本さんが移転について私たちに相談してくれたおかげで、スムーズな引き継ぎを行うことができました。
「より良い状態で移転したい」と山本さんから退去物件について相談をもらった後、新しく入るテナント候補の方に現状の賃貸条件について合意をもらったうえで、山本さんと一緒に大家さんへ引き継ぎの相談に行きました。
このような手順を踏むことで、新しいテナント候補は現実味のある引き継ぎプランをもって大家さんへ問い合わせることができ、他の候補者と競合せずに理想の物件が確保できます。テナントが入れ替わるとき、無駄な工事やリスクが発生することもありません。
スムーズなマッチングにより備品売買費を移転費用に充てることができた山本さん、初期投資を抑えて最短で事業のスタートを切ることができた新テナント、テナントが入らないリスクを回避できた大家さんと、三方にとってメリットがある事案でした。
店舗詳細 プレヴナン
住所 : 岡山市北区出石町1-4-20メゾン後楽園 103
営業 : 13:00〜20:00
定休日: 月曜日
公式HP:https://prevenant.jp
スタッフクレジット text : 岩井美穂