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2023.05.31

行列のできるスコーンと紅茶のお店
「森のみちくさ」が理想の実店舗を構えるための“伴走”とは

写真:内田伸一郎

パブリックカウンターやマルシェに出店するたび行列ができる大人気スコーン店「森のみちくさ」待望のリアル店舗が岡山市北区出石町にオープンしました。地元民と観光客が行き交う旭川沿いのお店は川を眺めながらゆったりとティータイムが過ごせて、新たな愉しみをまちにプラスしています。

お店ではクリームティという、紅茶とスコーンにクロテッドクリームとジャムが添えられた英国式の装いでもてなされます。スコーンはプレーン1種類のみ。素材からこだわったスコーンは、外はさっくり、中はしっとり口どけよく、優しい甘みは心までほどいてくれます。

店主である森郁恵さんが、大好きなスコーンを自力でつくりはじめ、場を持つまでに至った物語には、誰もがまちで夢を叶えるためのヒントが詰まっています。

今回の場所
築年月日:不詳/構造:木造2階建/延床面積:33.24㎡

写真:内田伸一郎

登場人物プロフィール 森郁恵(もりいくえ)さん

スコーンと紅茶のお店「森のみちくさ」店主。1981年、福島県生まれ。
上京し、飲食店勤務などを経験。夫とも東京で出会う。東日本大震災を機に当時暮らしていた福島県から岡山県へ移住。主婦業の傍ら、飲食店起業を目指してオリジナルスコーンの試作を重ね、インスタグラムで発信。2020年2月イベント初出店。以降、月1、2度「森のみちくさ」としてパブリックカウンターやマルシェ出店。2023年3月、出石町にリアル店舗をオープン。

「なにかしたい」けれど、制約の多い主婦の夢

森さんは福島県出身。震災を機に、夫の実家がある岡山県に移り住みます。最初は玉野市に住み、ほどなくして岡山市の中区へ。「瀬戸内海がきれいで癒やされました」と森さんは当時を振り返ります。

森さん「岡山へ来てすぐに子どもを授かって専業主婦になりました。子供が1歳半ぐらいになった頃から「なにかしたい」と思うようになりました。けれど、子どもが小さいとできることが限られました」

東京で飲食店勤務など経験していた森さんは、できるかぎり好きなことに携わりたいという理由でパン屋さんに勤めるようになります。

森さん「楽しかったです。製造もしてみたかったのですが、子どもの幼稚園の時間に合わなくて、出来なかったんです」

子育て中の母業は制約が多く、やりたいことができないもどかしさもあったといいます。パン屋さんに4年ほど勤めるなか、森さんのなかであたためてきた夢がむくむくと膨らんでいきます。

森さん「福島県に住んでいた時、すごく美味しいスコーンが食べられるカフェに祖母と母と姉とわたし、女4人で通っていました。あの「スコーンがある時間と空間」の雰囲気が大好きで、お店を持つなら、あんなお店がいいなと思っていました。

岡山で暮らして、主婦をしているなかで、なにかしたいなぁと考えていたとき、お店がやりたいと思って。そして『あのスコーンだ!』と思い出しました」

「スコーンがある空間や時間を売りたい」。こうして、森さんの挑戦がはじまるのです。

「好き」から生まれた出会いが、まちに飛び込むきっかけを生む

まずメインとなるスコーン試作の日々。試行錯誤が続きます。

森さん「勤めたパン屋さんの師匠(粉のプロ)に食べてもらったり、アドバイスをいただいたりしました。あと、絶対卵は使わないようにしようって決めていました。それは、卵アレルギーのお子さんがいる友だちのお母さんがすごく苦労されているのをそばで見ていたので。年配の方でも子どもでも、食べやすいスコーンを研究しました」

みんなに美味しく食べてもらいたい。そしてじぶんでも美味しいと思えるスコーンを作りたい。試作は1年ほど続けたそう。こうして、森さんにしかつくれないスコーンが生まれます。

現在店舗で販売中の「クリームティー」1,500円(税込)は、スコーン2個、クロテッドクリーム、ジャム、ミルクティーのセット。

また、森さんはインスタグラムで発信をはじめます。優しい語り口で日々スコーンを模索する森さんの様子に惹かれ、マチナカで同じようにお菓子をつくっている人たちと森さんがつながりはじめます。

そして、転機が訪れます。インスタグラムで知り合った「焼き菓子ハルトアオ」さんから毎月1日に行われる岡山神社「月始祭」のコーヒーを出店している「純喫茶松野」で、一緒にスコーンを売りませんかと誘われました。

森さん「最初は、まだまだ私のスコーンではお金いただけないって恐縮しましたし、怖かったです。でも、いつかは出さなきゃっていう思いもあったので「やってみよう!」と勇気を振り絞りました。正式な出店ではなく「純喫茶松野」の片隅に置いていただけたのも、心的ハードルが下がりました。

初めて私のスコーンをお客さまが目の前で食べている姿を見て、「これはもう死ぬまで忘れない光景」って思いました。インスタにあげてくれたひともいらっしゃって、「幸せってこれか」と思いました。やっぱり手渡せるって嬉しいし、力が湧きました。

みなさん、ニコニコしながら食べてくれたのが本当に嬉しくて。こんな光景がいつも見られるんだったら、お店やろうって思いました。」

岡山神社初出店時(写真:森さん提供)

森さんがまちに飛び込んだ瞬間でした。得難い経験は大変だった菓子製造免許取得や菓子工房づくりを乗り越える力を与え、いよいよ「スコーンがある空間や時間」を提供する場所づくりを叶えるのです。

「ここしかない」場所を見つける、超伴走型不動産仲介

2020年の初出店からコロナ禍に突入し、もどかしい日々を送った森さんですが、4ヶ月ぶりに再開した「純喫茶松野」では、予約から人気が爆発。さらに月に1度、パブリックカウンターでの販売もスタート。

森さん「パブリックカウンターは「売る場所があるってこういうことなんだな」って体験できました。あと、ずっと喫茶店のひとだと思っていた松野さんが、実は不動産屋さんだってこの頃知りました(笑)」

写真:森さん提供

森さんはその頃、店舗物件をさがしていましたが、なかなか理想の物件が見つかりません。場所もマチナカがいいのか自宅のそばがいいのかすら決まらない。そんなタイミングで、2022年の秋に岡山神社の「蚤の市」があり、出店することに。

森さん「前日準備が立て込んで、朝も早かったから徹夜だったんです。もうヘロヘロで販売に行きました。

出店場所は旭川のほとりで、わたし、すごく疲れてるのにめちゃくちゃ気持ちよくって、場所にすごい元気をもらえたんです。ここはわたしのパワースポットだって思いました。それで、松野さんに「お店をするならここがいいです」って言いました」

森さんがパワースポットだと感じた、旭川沿いの道。実店舗のカウンターから、いつでも眺めることができる | 写真:内田伸一郎

しかし、森さんがお店を出したいと直感で決めた出石町は、住居も店舗も人気があり、なかなか空き物件のないまちです。

森さん「旭川のそばという条件のほかは、あまりゴミゴミしてないところで、居心地がいい場所、など、不動産を探しているとは思えない感覚的なリクエストばかり。なのに、あっという間にぴったりな物件を探してくださって、びっくりしました。

さらに、松野さんは<月に何個スコーンが作れるか>など、生産性を加味して<この家賃で経営していけるか>など、持続可能性も一緒に考えてくださいました。コーヒー淹れるのが上手なだけではなかったです(笑)。」

迅速に物件を探し出せたのは、森さんの実店舗への思いを理解していたからこそ。当該物件は古い一軒家だったため、森さんは<改装費はどれくらいかかるんだろう><住居用から店舗にするにはどうしたらいいんだろう>など、素人では皆目検討つかない不動産のあれこれも相談できたことも大きかったといいます。改修にあたっては、建物に愛着を持つ大家さんとも密に連携を取りながら、整え方の相談に乗ってもらったそうです。

森さん「実は、「本当にお店できるのかな?」って不安があったんです。でも、松野さんがひとつひとつクリアにしてくださって、私でもやれる気がしてきました。この物件と出会っていなければ、開店できなかったかもしれません」

借り手のポテンシャルを把握して、まちに飛び込める不動産を探し、「好き」で輝く場所をみつけること。「森のみちくさ」は、森さんの「好き」と、場がもたらす可能性をつないだことで生まれたソーシャルイノベーション。

また、暮らしやすいまちとは、みんなが自由に享受できる魅力的な事柄がたくさんあって、質が高いこと。魅力的な「お店」を地域に増やしていくことは、まちの価値をあげていくことにもつながります。

実店舗を持った森さん、「今がいちばん楽しい」と声をはずませます。

写真:内田伸一郎

森さん「スコーンを焼くのが私は本当に楽しくて、その「楽しい」という気持ちを持ち続けたいんです。だから1日に焼くスコーンの量は「楽しい」と思えるくらいにしています。たくさん焼けばそれだけ儲けも出ますが、わたしはスコーンを焼くことを作業にしたくないんです。

クリームティが楽しめる店内もテーブル2つとだいぶこじんまりとしています。回転率なんて全然考えてないです。むしろお客さまにはのんびりしてほしいし、ずーっと居てほしい(笑)

そのスタンスもふくめて、わたしの好きなことであり、やりたいことです。あらゆる意味で、
それが叶う場が持てて、うれしいです」

HITPLUS担当者のコメント

神社でモーニングに初めてご一緒いただいた頃から、「いつかは自分のお店を持ちたい」とお話をうかがっていました。当時は、会う度に「こんなお店にしたい」「お客さんはこんな感じで…」と、2人でイメージをどんどん膨らませていたように思います。
お店を持つまでは、森さんのペースで無理なく楽しみながら、イベントや間借りスペースでの出店などステップアップしていった感じです。お店を持つ前に既にたくさんのファンがついてました。
物件を探す頃には、森さんと同志のような関係性になっていたので(勝手にエージェント気分)、森さんの想いを実現できるかという判断軸を私自身がしっかり持った状態だったのでスムーズに進めることができました。
森さん自身、お店を始めるにあたって色々と不安はあったようですが、事業計画や融資の件などについては、私の前職の知識もいかしつつ、伴走しながらひとつひとつの課題をクリアにしていったことは私にとっても良い経験となりました。森さんが本当に楽しそうにお店を立つ姿をみて、いつも幸せな気持ちにさせてもらってます。(担当:松野)

店舗詳細 森のみちくさ

住所 : 岡山市北区出石町1-4-1
営業 : イートイン11:00〜15:00(完全予約制)
     テイクアウト11:30〜15:00
     紅茶(ひとくちスコーン付)は予約なしで購入可
     ひとくちスコーンはなくなり次第終了
定休日: 不定休 公式インスタグラムにて最新情報をご確認ください。

スタッフクレジット text : アサイアサミ 

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